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一喜荘時代 其の壱
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71年頃から4年ほど住んでいた一喜荘、
JR大森駅北口から京急の大森海岸駅へ行く途中に在った。
トイレは共同で家賃4500円、昭和のこの時代なら
畳一枚換算が千円という標準的な賃貸料だったと思う。
家は駅から遠かったが、すぐ近くに銭湯があるのは便利だった。
48円・・だったかな、当時の入浴料金は。
お湯をたくさん使うから、という理由で
女湯の方は洗髪料を別に取られてたような記憶がある。
だもんで、髪が長かったけれど「男湯」の僕は
料金は取られなかったものの肩身が狭かった。
露骨に嫌な目で見るオバチャンとかも居たしね。
渋谷や新宿とは違い、下町または工場町とも言える大森界隈には
長髪の男が少数だったせいもあるんだろうけど、
道端でチンピラに絡まれることも何度もあった。

なので(田舎の)一喜荘へは寝に帰るだけ。
都心へ出るとほっとしたもんだ。
当時の友人や取り巻きが石神井とか大泉学園に居たもんで
お互いの中間地点として渋谷に集まることが多かった。
オリンピック通りに在ったジァンジァンの昼の部を
立教大学の軽音部がブッキングを担当していて
オ―ディションで気に入ってもらい何度か歌わせて頂いたのも
今となってはいい思い出だ(お客さんは少なかったけどね)
その彼らとはその後、あちこちのイベントに出向いたり
メンバ―の一人だった無茶苦茶ギタ―の上手い男は
僕のバックミュ―ジシャンとして重宝した時代もあった。

しかしねえ・・
なんで皆、池袋や石神井や大泉学園に集中してたんだろ?
そこんところが未だに謎だ。
僕が大森に住んだ理由は簡単だ。
今のカミさんの実家が(当時は自宅か)大森だったから。
駅を挟んだ反対側、大森郵便局の近く。
カミさんの家で飯をたらふくご馳走になり、
遅くなったとしても歩いて帰れる距離だったこと。
定収入が無く貧乏だったので、これは大いに助かったのである。

だから今でも、カミさんには頭が上がらない(苦笑)


一喜荘時代 其の弐
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はっぴいえんど、遠藤賢司の名盤を世に出したURCレコ―ド。

始まりは大阪の高石音楽事務所が発足させた会員制組織の

アングラ・レコ―ド・クラブ(URC)だった。

会費を納めた会員には隔月でLP1枚とEP2枚が配布され

その音源の希少価値から会員数が増え続けたことから

ア―ト音楽出版と提携してURCレコ―ドが誕生したという経緯がある。

その小さなレコ―ド会社がリリ―スしたアルバムには

高田渡、早川義夫、休みの国、岡林信康、六文銭、中川五郎、

金延幸子、ディランII、友部正人、シバ、三上寛、加川良、

等々、60~70年代音楽史の錚々たる顔ぶれが並んでいる。

そしてレコ―ディングディレクタ―を務めていたのが

若き日の小倉エ―ジ氏(音楽評論家)である。

これはもう神!田舎の高校生にとっては憧れの的だったわけで・・

 

ならば!と、京都の友人宅に居候しつつ

高石友也音楽事務所へ売り込みに行ってみると

「あ―、此処じゃ何にもできないんだよねえ。

今は東京の音楽舎が全て取り仕切ってるからさあ~」

71年のクソ暑い夏の昼下がりであった。

んじゃ、東京さ行くべ!

 

翌年、原宿に在った音楽舎の事務所を訪ねる。

応対してくれたのはマネ―ジャ―とプロモ―タ―を兼ねた

高木輝元さん(後に如月ミュ―ジックを立ち上げた)だったと思う。

持参したテレコで歌を聴いてもらったが

(カセットなんて無い時代、オ―プンテ―プのデッキ持参だぜ)

「音質悪すぎて、これじゃわかんないねえ。

スタジオ用意するからデモテ―プ録ろうよ。」

後日、指定された御苑スタジオへ向かい

コンソ―ルからあれこれ言われながらモノラルで何曲かを収録した。

そのスタジオのモニタ―は三菱2S-305で(ダイヤト―ン以前)

録り終えた歌を聴かせてもらうと、

ギタ―の音が途轍もないほど良くてびっくりしたくらい。

「帰ってからも聴きたいでしょ?」と言って

5インチのリ―ルにダビングしてくれたのが嬉しかった。

 

そしてまた数日後、再び音楽舎を訪ねる。

高木さん曰く

「遠藤賢司でもなく、友部正人でもなく

もっと斬新な表現性を打ち出してくれないと

今のウチじゃ売り出せないなあ」と、ぴしゃり。

「ライブを続けながら鍛錬した結果をまた聴かせてほしい」と、

慰めとも励ましとも取れる言葉を背中に、その場を後にした。

URCデビュ―が遥か向こうに遠ざかり、ちょいと傷心の十九の春。

さて、この先どうしたもんか・・

 

この時の(幻の)音源、当時ダビングされたままの姿で残っている。

たぶん押入れのダンボ―ルの中にある筈。

けれど40数年前の風遠ししてないオ―プンテ―プ、

まともに再生できないと思う。間違いなく。

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