Kazura in his own write(自叙伝という名の回顧録)
50歳を超えた頃、ふと思い立って過去を遡り、幼少の頃からの思い出を書き綴ってみました。自叙伝と言ってしまうと少々大袈裟な気もするのですが、その後のかずら元年を形成する重要なファクターであったことから敢えて自叙伝とさせて頂きました。勢いで1973年辺りまで綴ってみましたが、そ...
第一章 決別の詩
見上げるまでもなく、顔をちょっと上げただけで目の前には大きな空が広がっていた。 それくらい、十勝平野の広大な土地の真ん中には大きな大きな空が在ったのだ。 街角の信号機さえ、遥か地平線の彼方へと続く真っ直ぐな道のために存在するかのように...
第二章 ブライアン・エプスタインの幻影
札幌の街に移り住んだ僕は、北大から近い辺りにアパートを借り 似合わないスーツを着込んでヤマハのピアノを売った。 営業を何年か経験した後、工場でギターのデザインでも手掛けてみたいと まるで単純な発想から入社したのだが、或る日企業イメージのレポートを求められたときに...
第三章 ウエストサイドストーリーとミスタータンブリンマン
時代は少々前後してしまうが、音楽との出会いに触れてみよう。 小学校低学年の頃から歌は大好きだった。 ただし渋い流行歌ばかりを好んで歌っていたようで、水原弘の「黒い花びら」や フランク永井の「有楽町で逢いましょう」とか、果ては三橋美智也の「古城」まで、...
第四章 fanfanにて
僕がアイヌ語読みのオンモ(ommo)と呼んでいたトモミさんは「知魅」と書く。 彼曰く、先妻との間に出来た子だったらしく母親のことも全く知らないと言う。 確かに端正な顔立ちの父や弟とは全く異質のごついマスクをしていたし その生い立ちからか、僕以上に愛には飢えていたような気がす...
第五章 バラが咲いた
生まれ育った町に舞い戻る形にはなったけれど、家にはほとんど帰らずにいた。 たまに帰ったとしても朝方眠りに就き、陽が傾きかける頃になってようやく起き上がり 母親と会話することも、ごく稀なほどだった。 fanfanが家であり、集まる仲間たちが僕を大切にしてくれていたからだ。...